奈良県荒井知事発 地域別診療報酬制度

ダイジェスト

「地域別診療報酬制度」により奈良県から病院や薬局が県外へ流出

奈良県が診療報酬単価を一律に引き下げることができるようになると

・病院や薬局などの医療費収入が減少します。

・医療従事者の給与が減る、業務負荷が高くなる、失業リスクが高まる、県外勤務の可能性が高まる。

・奈良県から病院や薬局が減る可能性が高まる。

・奈良県の医療サービスの質が低下するだけでなく、県外への受診、薬の受け取りに行く必要がある。



地域別診療報酬制度とは、一体、何でしょうか?

奈良県の荒井知事が、2018年に「高齢者の医療の確保に関する法律第14条」に定められた(診療報酬の特例)の 適用を打ち出しました。この制度により、奈良県は診療報酬単価(1点10円)を 一律に引き下げることが出来るようになります。目的は、県が負担する医療費の削減です。

医療従事者への影響は?

病院や薬局などは、診療報酬単価により医療費収入が決定します。現在は1点10円ですが、仮に奈良県が9円に設定すると収入が1割減ります。収入が減ると、従業員の給与が減る、従業員数を減らし一人当たりの労働負荷が増える、雇用が守られないといった医療従事者にとってデメリットが大きくなります。また、制度がいつ変更になるか分からないため、経営者にとってはリスク材料になります。

現在、奈良県のみが導入を宣言しています。そのため、奈良県内の病院や薬局の経営者は、収入減のリスクが常につきまとうために、新たな病院や薬局の設置を控え、また、制度の導入されていない県外へ移転する可能性も高くなります。

県民(患者)への影響は?

奈良県民への不利益は、病院や薬局が今後減少することにより、国が補償する医療サービスを他府県に比べて十分に受けられない状況になります。例えば、病院から処方された薬を受け取るための薬局が無く、県外まで取りに行く必要が出てくる。人工透析を長時間かけて他府県に受けに行く必要がある等、予想されます。

荒井県知事が国に対して提案した国家医療の根底を揺るがしかねない制度。その裏には、ハコモノ行政の支出増大の穴埋めを医療費削減から捻出する構図が見えています。2019年の選挙では県民は反対する必要があるのではないでしょうか?

奈良県が「地域別診療報酬」の活用を打ち出す

福祉増進よりも医療費抑制が自治体の仕事に?

奈良県の荒井知事は、2018年4月からの国民健康保険制度の都道府県化を契機に、 「高齢者の医療の確保に関する法律第14条」に定められた(診療報酬の特例)の 適用を打ち出しました。

奈良県が昨年度(2018年3月)に策定した「第3期医療費適正化計画」は、国の 準備した推計よりももっと厳しい計算の仕方で6年後の医療費(抑制)目標を立て、 その達成に届かない場合は〈診療報酬の特例〉を活用して、診療報酬単価(1点10円)を 一律に引き下げることも検討するとしています。

これは、医療費適正化計画で医療費目標を立て、国保都道府県化と地域医療構想による医療費管理を 担わされた都道府県が、「住民の福祉の増進」よりも、医療費抑制を重視する国の狙い通りの展開で、 いわば「典型モデル」になると考えられます。 協会は2007年に、後期高齢者医療制度の根拠法である同法が成立する以前から都道府県別診療報酬とは トンデモない話であり、絶対に活用させてはならないと言い続けてきました。

最初のうちは、診療報酬の 決定権限を都道府県が持つなどという話は荒唐無稽で、現実性がないという声も聞かれましたが、それ以降、 国が着々と進めてきた医療政策の展開(都道府県による保険財政と医療提供体制の一体的管理システムの構築) の結果、都道府県自身が独自に診療報酬を設定したいと言い出すところまできてしまいました。

つまり、「絵空ごと」にも思えた構想が差し迫った危機となりつつあるのです。 2018年4月11日の財政制度審議会・財政制度分科会で「奈良モデル」が紹介され、5月23日に公表された 「新たな財政健全化計画等に関する建議」、そして6月15日の「骨太方針」にも「地域独自の診療報酬」が 書き込まれました。それは奈良県が言っていることとまるで同じです。

「国保財政の健全化に向け、法定外繰入の解消など先進事例を後押しするとともに横展開を図り、受益と負担の 見える化を進める高齢者の医療の確保に関する法律第14条に基づく地域独自の診療報酬について、都道府県の 判断に資する具体的な活用策の在り方を検討する」 (経済財政運営と改革の基本方針2018 P57) 

保険で良い医療と良い医業を成立させる日本の国民皆保険体制を根底から解体する地域別診療報酬の動きを 「奈良ローカル」と軽視することはできません。 奈良県で万が一、診療報酬の単価が引き下げられれば、医療機関の開業・就業、患者の受療動向にも大きく影響を 与え、隣接県から隣接県へと、全国に都道府県別診療報酬が拡大する危険性があります。その時が、国民皆保険が 保障してきた保険医療のナショナルミニマムの終焉です。


関連①「地域別診療報酬の凍結」荒井知事の選挙対策だった


2018年12月21日、「荒井知事が地域別診療報酬の凍結を奈良県医師会と締結した」と医療関係の広報誌が発表した。その内容が以下の書面である。一見、契約書に見えるが、法的に何ら拘束力もない。まして奈良県政に対しての契約ではない。理由は以下である。
奈良県知事選立候補予定者”荒井正吾、と、奈良県医師会、との間での協定書である。回りくどく知事であるように記載されているが、荒井正吾個人奈良県医師会政策協定書に過ぎない。また、条項の1から5を読むと分かるが、一切「凍結」はされていない。1条「~連携し、協力する」2条「~真摯に取り組む」3条「~積極的な協力を行う」4条「~協力、助言を行う」5条「~生じない限り、本県で地域別診療報酬を下げることはない旨確認する」

かろうじて、5条を奈良県医師会は引き出したと言いたいのだろうが、何ら2018年5月の社会保障制度改革推進会議(関連②記載)で、荒井知事が発信した内容からそれてはいない。つまり、「凍結ではなく、地域別診療報酬制度を導入することに合意した上で、5月の発信内容から条件変更をしないこと」と確認したことになる。凍結は誤魔化した表現であり、理解の浅い県民や医師会員への選挙対策に他ならない

関連②「地域別の診療報酬は"伝家の宝刀"」、荒井奈良県知事

社会保障制度改革推進会議、地域医療構想と国保改革を議論 

2018年5月28日 橋本佳子(m3.com編集長)

 社会保障制度改革推進会議(議長:清家篤・慶應義塾大学商学部教授)が5月28日に開催され、地域医療構想や国民健康保険改革の進捗等について議論、国保改革の取り組みを紹介した奈良県知事の荒井正吾氏は、「受益と負担を総合的にマネジメントしていく」と説明、受益と負担が均衡しない場合、「地域別の診療報酬設定の活用は、最終的な選択肢の一つ」と説明した(資料は、内閣府のホームページ)。

 荒井知事は、「診療報酬の引き下げありき、という政策ではない。むやみに"伝家の宝刀"を抜くことはしないが、法律で規定された権能であり、抜けないのもおかしい。どんな時に刀を抜くべきか、法律の趣旨をいかに解釈するかが重要」と述べた。地域別の診療報酬設定は、「高齢者の医療の確保に関する法律」に規定された権限であり、診療報酬の1点10円という単価を変更できる規定。都道府県の申請を受け、最終的には厚生労働大臣が定める。

 国保の都道府県単位化は、2018年度から全国でスタート。奈良県では、2018年度には国保の赤字補てんのため一般会計からの法定外繰り入れを解消、2024年度には各市町村で異なる保険料水準の統一を目指す。その実現に向け、(1)医療費適正化の推進、(2)国保事務支援センターの設置、(3)国保事務共同化の推進――を3つの施策の柱に据える。医療費適正化では、後発医薬品の普及推進、医薬品の多剤投与・重複投与の適正化、糖尿病性腎症の予防、レセプトデータやKDB(国保データベース)を活用した医療費分析と分析結果の具体的活用――などに取り組む方針

慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏は、「地域別の診療報酬については、賛否があると承知している。法定外繰り入れが解消され、保険料の県内統一という大前提が達成された後に、受益と負担の調整方法として、保険料をアップするか、地域別の診療報酬を"伝家の宝刀"を使うのかを判断するのだろう」と受け止めた。「負担には限界がある。給付について国が決めれば、その負担はするものだと考えるのは問題。負担できる限界に対して、どこまで給付するかという、給付と負担の間でより良いけん制関係を構築することが必要であり、その方法の一つとして地域別の診療報酬があるのだろう」(土居氏)。


慶應義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏は、「地域別の診療報酬については、賛否があると承知している。法定外繰り入れが解消され、保険料の県内統一という大前提が達成された後に、受益と負担の調整方法として、保険料をアップするか、地域別の診療報酬を"伝家の宝刀"を使うのかを判断するのだろう」と受け止めた。「負担には限界がある。給付について国が決めれば、その負担はするものだと考えるのは問題。負担できる限界に対して、どこまで給付するかという、給付と負担の間でより良いけん制関係を構築することが必要であり、その方法の一つとして地域別の診療報酬があるのだろう」(土居氏)。

 慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏は、奈良県の施策は、2013年の社会保障制度改革国民会議報告書で提言していることであり、これらを実施しないことには「国保改革が実現できない」と指摘。権丈氏は同会議の委員も務めた立場から、国保の保険料水準統一は重い責任を伴うことであり、地方であっても、都会と同様に、医療を受ける機会を提供できることを保障しつつ、水準統一を進めていくことが報告書の趣旨であると説明した。

 地域医療構想については、茨城県と奈良県の事例が紹介された(『地域医療構想8府県は未設定、医療計画「原則記載」の在宅目標』を参照)。

 安倍晋三首相は、5月21日の経済財政諮問会議で、地域医療構想について、「今年秋を目途に、全国での策定状況を中間報告し、先進事例を横展開するなど、対応方針の策定を後押ししてほしい」と発言している。清家議長はこの発言を引用し、「まさに今日の事例は、大変貴重であり、好事例の横転換を図っていく必要がある」と指摘した。

 「なぜ地域医療構想が進んでいない地域があるのか」という委員の質問に、茨城県の担当者は、「地域医療の崩壊の危機が迫っているかどうかで、進捗状況が決まってくるのではないか」と回答した。

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