奈良県立高等学校適正化実施計画問題

ダイジェスト1.

15年前の高校再編で少子化対策は十分。さらに削減の理由とは

15年前の高校再編による11校削減により、奈良県は既に全国屈指の高校過疎県となりました。ではなぜまた、高校再編計画なのか?誰しも首を傾げます。実は、少子化に対応した「高校再編」と言いながら、大きな裏が隠されていました。れは「県立高校の耐震化放置の埋め合わせ」を教育予算をかけずに対応することでした。

平成29年度の文科省調査より、奈良県の公立高校数は同規模人口の他県と比較して約4割も少ない状況です。さらに今回の高校再編計画により3校削減され教育環境は全国最低レベルとなります。また、一人当たりの教育予算は全国37位と最低レベルです。

今回の高校再編「少子化」と言いながら既に高校数は少なく、新たに削減する理由はありません。特に、トップ校の平城高校、人気校の登美ケ丘高校、西の京高校を廃校とします。40年もの歴史、地域や関係者が育ててきた高校を理由なく廃校する(廃校の議論がなされていないことが分かっています)ことは教育財産の大きな損失です。また、教育コースの閉鎖や教員数の削減は、奈良県が築き・継承してきた教育品質を損なう危険性さえあります。2018年12月読売新聞に記載された「教育行政不信招く」が適当な言葉、教育史に残る社会問題に発展しています。

❃1.奈良県発行の高校再編リーフレット(白紙化の可能性ありのため参考資料)

2018年、奈良県教育委員会が長年放置してきた県立高校の耐震化問題が社会問題となりました。特に、奈良高校は建築の専門家が”人を入れてはいけない”と指摘する程の危険な状態にあり、既に使用禁止状態であることが分かっていたにも関わらず、耐震工事を中止し3年間も放置するという人命軽視の行為が発覚しました。平成27年度に吉田教育長から荒井知事へ報告した後に、耐震工事が中止されており、奈良県教育委員会だけでなく荒井知事の責任問題に発展しています。

以降、高校再編計画の強行問題、奈良高校の耐震問題、2つの問題について取り上げます。 

ダイジェスト2.閉校が決定した生徒との懇談会「教育行政に絶望」の真相とは

教育長(吉田育弘)と教育委員長(花山院・春日大社)が2018年10月に、閉校を決めた平城高校に訪れ、生徒との直接懇談を実施しました。出来事は関西テレビ報道ランナーで報道されました。懇談会後の平城高校生の言葉が印象的

「奈良県の教育行政に絶望しか感じない」

この言葉が象徴するように、今回の高校再編計画は、何事も無かったで済まされない多くの問題を内在しています。違法行為や人権問題だけでなく、荒井知事も計画に指示を出しており教育行政と県政の独立性の問題など日本の教育行政問題として行政法の専門家、弁護士は警鐘を鳴らしています。2019年の統一地方選においても争点の1つとなっており”民意を入れた計画にする”と、白紙撤回を公約にする候補者が表れています。

❃1.高校再編に賛成・反対の奈良県議員 ❃2.結論ありきの計画に疑念(産経平成30年12月12日)  ❃3.平城高校保護者記事

ダイジェスト3.多くの奈良高校生から「死の恐怖」を訴えるツイートの真相とは

2018年10月 奈良県議員の川田議員(無所属)、奈良市議員三橋議員の活動により、総合調整権が発動され事が動きました。それまで教育委員会の吉田教育長は「高校再編計画を優先するため、平城高校への移転までの3年半は奈良高校の耐震化は行わない」と言い切っていました。また、安井校長も「熊本震災でも同強度の校舎も倒壊していないため安全だ」と説明をしていました。また、県民が奈良高校の安全に万全を期す請願を奈良県議会に提出されましたが否決されました。

ところが、情報開示請求より過去の調査の結果では、耐震強度を示すIS値が0.05という極めて低い値(震度6で倒壊する)、さらにコンクリート強度は耐用年数を大きく超えた使用禁止状態であることが分かりました。以下の図の通り、南側校舎を除くすべての校舎が使用禁止状態である危険な状態を吉田教育長は知っていたにも関わらず、2年前には耐震工事を中止した上で何の対策も行わず放置していたことが明らかになりました。

この状況が明るみになる中でも対応を躊躇していた奈良県教育委員会に対して、総合調整権が発動され、同時に、生徒や保護者は人命軽視・人権問題であると訴えが相次いで起きました。そのため安全対策について具体的に動き出しつつあります。しかし、現在も協議中であり出口が見えない状況は続きます。(2018年12月)

❃1.国の耐震基準満たさぬ奈良高(産経新聞 平成30年12月13日) 

❃2.耐震問題統一選の争点に(毎日新聞 平成30年12月21日)

平成30年8月 教育振興大網振興課
「奈良県立高等学校設置条例の一部改正について」の資料より

1.改定理由
県立高等学校適正化実施計画に基づき、県立高等学校の設置及び廃止を行うため、所要の改正をしようとするものである。

2.改正経緯
平成30年4月に奈良県教育委員会において、時代の変化に対応した新しい高校づくり、社会や地域とつながる教育の推進、教育内容や公明の見直し等により、「魅力と活力あるこれからの高校づくり」をするための方針として「県立高等学校適正化推進方針~高等学校教育の質向上と再編のために~」を策定した。当該方針に沿って、今後概ね10年間で県立高等学校において「魅力と活力あるこれからの高校づくり」を進めるために質向上と再編成を図るための具体的な計画をとりまとめたものが「県立高等学校適正化実施計画」であり、当該計画に基づき、所要の改正を行うものである。

3.改正概要(33校→30校)
 ①西の京、登美ケ丘、平城高校を廃止 ②県立大付属新設 ③国際高校新設 ④奈良高校移転 ⑤大淀/吉野→奈良南高校 ⑥大宇陀/榛生昇陽→宇陀高校 ⑦校名変更:奈良朱雀(奈良商工)、高円(高窓芸術)、奈良情報商業(商業)❊詳細は奈良県HPに記載されています。

問題点1 奈良県立高校適正化実施計画

はじめて拝見される方は、普通の高校再編計画と思われるでしょうが、実は、全国的に例を見ない前代未聞の行為が行われており、連日のマスコミ報道、保護者や関係者の怒りは頂点に達しています。

民意無視・人権問題・人命軽視、さらに、本条例制定において違法行為が多数確認されています。特に、吉田教育長の虚偽説明や、教育委員会の国補助金申請に際する詐欺行為、越権行為は明らかに問題であり社会問題となっています。しかし、県議会はこれを見て見ぬふりをして可決成立しました。

地方自治法第14条1項に違反しており、県議会の行政倫理が著しく損なわれています。本来は白紙撤回されなければならない案件に該当します。


主要な問題点

校名を伏せたままのパブリックコメント取得。県民は情報が無く判断できず、実質、民意を排除。 行政法の専門家からは、前代未聞の以上な行為だと非難が相次ぎました。❃1

少子化を理由に、奈良県トップ校・人気校であり最高評価を得ている平城高校を閉校する   (定員割れ・低評価の高校から削減することが一般的。人気校・トップ校閉校は大きな県財産の損害)

ひとつの市にひとつの普通科という人口比率を無視した規定を盛り込む。(特に、奈良市と高田市では人口比率6倍も異なり、奈良市では普通科への進学に大きく支障が出る)

月に校名公表しわずか1か月で条例可決する。奈良市議会では説明が不十分と延期を求める要望書を全会一致で決定。また、2週間で2.6万筆の反対署名が集まる。❃2

しかし、署名受け取りの際、吉田教育長「気持ちは受け止めるが計画は変えない」と断言する。

反対署名を推進する平城高校PTA会長宅へ吉田教育長が伺い署名提出を止めるよう圧力をかけたとされる❃3

生徒急増期の3校(西の京、登美ケ丘、平城)を選定および閉校とする決定根拠がない。教育委員会会議で議せず、民意も聞かず事務局で決定された。 ❊橿原、生駒、高円高校も生徒急増期の高校であり、説明に矛盾がある。 

国際高校設置の明確な必要性や議論がない。目的の『IB認定』は1クラスのみであり、その他は普通科となる。なぜ1クラスのIB認定のために登美ケ丘高校1校を閉校するか根拠が示されていない。 また、県内他2校の国際高校との連携や教育内容の関係性についても何の方針も示されていない。❃4

平城高校の耐震工事に対する国への詐欺行為が発覚平成27年に平城高校の耐震化のために、国補助金を活用し対応を完了している。同時期に、奈良県教育委員会は、平城高校の廃止を計画していた。また、吉田教育長は「奈良高校移転のために平城高校を閉校するのではない」と議会で断言している。以上から「国に対して閉校を計画している高校施設に対して、今後、20年を平城高校として使用するために耐震工事をするということで補助金を得た」詐欺行為が事実認定された。本来、平城高校は存続する計画である。

奈良県教育委員会が県立大学付属高校を設置することは越権行為である。県大付属は奈良県教育委員会の管轄ではない。しかし、条例計画を策定時、既に西の京高校を閉校し、県立大学付属高校の設置を決定していた。本来、県立大学の理事会で決定すべきことであり、奈良県教育委員会が越権行為により勝手に計画を策定していた。越権行為で違法である。

なぜ、ここまで民意を入れず、違法行為まで犯して強行しなければならないのか?

実は、高校再編の裏には「奈良高校の耐震化放置問題」が隠されていました。また、奈良高校の跡地利用については、「奈良選出の自民党国会議員と荒井知事の間で、ホテル建設が持ち出されているため奈良高校は移転しかない」という奈良高校安井校長が口にしたという関係者からの情報もあり、今後、事実解明に注目が集まっています。

高校適正化実施計画の経緯

裏の会議で「教委の耐震化不備を高校再編で誤魔化す」卑劣な計画決定が全ての発端であり引責は不可避 

参考までに、県立高校削減に「反対する議員」と「賛成した議員」を掲載します。

計画に賛成(=違法行為を容認する)に自民党奈良連合が組織的に動きました。教育環境を充実させたい有権者は、倫理観の欠如のある議員への投票は、今一度、考える必要があります。

問題点2 奈良高校耐震化放置問題

文科省は公共施設の安全確保を国から地方へ要求を出しています。その基準がIS値0.7以上を満たす校舎の耐震化です。大震災におけるIS値と倒壊の統計データ(一般財団法人日本耐震診断協会資料)では、IS値0.7以上あれば震度6強の地震発生(過去の地震)でも”中破はするが倒壊しない”とされています。つまり、校舎は破壊されて使用禁止になるかもしれないが、生徒や教職員の命は守られる、という最低限のレベルを文科省は要求しています。しかし、奈良高校の校舎はこの基準を満たしていません。

大震災におけるIS値と倒壊の統計データ
大震災におけるIS値と倒壊の統計データ

奈良県においても耐震化は喫緊を要する課題として公共施設に対して、「奈良県耐震改修促進計画」に建築物耐震化の優先順位等の基準として定められる奈良県学校耐震化ガイドラインが定められました。このガイドラインに従うことが奈良県教育委員会に課せられた義務であり、耐震化については教育委員会の裁量権はありません。しかし、このガイドラインを無視して対応を進めたのが、今回の社会問題に発展する切欠になりました。つまり違法行為を行ったことになります。

以下は、2018年10月7日に行われた奈良県議会 川田議員、奈良市議会 三橋議員の政務調査報告で報告された資料です。奈良高校は2007年に耐震診断を行い、2011年に大規模改修耐震設計、2014年に格技場の補強工事を行いました。室内運動場を2015年に実施する計画で、奈良県議会に計上し承認を得ていましたが、教育委員会会議で決せず、事務局だけの判断(吉田教育長が指示)で中止を行いました。この行為も地方自治法に定める法理を無視した行為であり、責任問題は避けられません。尚、屋内運動場や南校舎の耐震化の具体設計は既に行われており、総額1.8億円に上ると言われています。血税の損失についての責任追及も行わなければなりません。

奈良県立高校再編計画が可決されて以降、吉田教育長は奈良高校が危険な状態であると訴える中でも、全体最適化を優先し、奈良高校生の安全については配慮しない、と断言していました。(2018年8月防災・県土強靭化特別委員会での答弁より)しかし、奈良市が奈良高校の体育館を第二次避難所指定から解除し、マスコミ報道により情報が広がる中で、9月27日に奈良高校の耐震化調整権が発動され、耐震化へ動き出し始めました。これまで、奈良高校の耐震化に対して反対であった、自民党、公明党他は、態度を変え耐震化に賛成する動きもかけられました。

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